しめやかに初冬の風物詩「牡丹焚火」

長寿を全うした牡丹を紅蓮の炎が包む牡丹焚火

 須賀川の初冬を彩る風物詩の一つ「牡丹焚火(たきび)」は21日、市内外から多くの俳句愛好者らが集まり、牡丹園中央広場でしめやかに行われた。新型コロナ禍で密状態を避けての実施となったが、遠くは東京都からも来場者があった。
 長寿を全うした牡丹を火にくべて、大輪を咲かせ楽しませてくれたことへの感謝を表す行事で、俳句をたしなんだ大正時代の園主柳沼翁が親交のあった俳人を招いてはじめたのがきっかけとされる。
 当時の俳壇を代表する原石鼎らの作品に詠まれ、今も多くの愛読者に支持される吉川英治作の時代小説「宮本武蔵」の一幕にも登場する。
 序盤は夕空を焦がさんばかりの火柱と火の粉が舞い、火勢が落ち着く頃には枝を包み込む炎の色が赤や紅から青や青紫に徐々に変化し青紫の炎に包まれ、終盤には炉の周りを牡丹焚火特有のかぐわしい香りが包み込む。この光景は環境省の「全国かおり風景100選」に選ばれた。

牡丹焚火特有の青紫の炎が美しく映える

 また牡丹焚火は420有余年の歴史を持つ松明あかしとともに季語として歳時期に収載されている。

 昨年までは桔槹吟社が中央俳壇で活躍する俳人を講師に迎えて記念講演会を開いてきたが、新型コロナ感染拡大防止のため、今年は取りやめとなった。
 また密状態を避けるためにソーシャルディスタンスを確保するべく観覧者用のいすが用意され、例年以上の静かな催しとなった。
 火入れ式で橋本克也市長は牡丹焚火のいわれを紹介し、「牡丹焚火は俳句愛好者にとって心寄せる行事であるとともに、須賀川の俳句文化発展のために重要なものとなっています。ご来場の皆様には牡丹焚火をご堪能いただきたいと思います」と述べ、森川光郎桔槹吟社代表は牡丹焚火をテーマにした自作の詩を披露した。
 橋本市長、森川代表、柳沼直三牡丹園保勝会理事長が火入れをし、桔槹同人2人が火男を務め、天寿を全うした牡丹が火に包まれる情景を多くの観覧者が静かに見守った。
 今年は心配された前夜までの雨の影響もなく、火勢の落ち着きと夕暮れのタイミングがちょうど重なり、例年以上に青紫の炎に包まれた焚火が楽しめた。