台風19号被害から1年 概ね復興… ツメ跡今も

釈迦堂川河道整備など災害を繰り返さないための対策が続く

 須賀川市と鏡石町を含む県内各地域を記録的な水害被害が襲った、昨年10月の台風19号(東日本台風)から1年が過ぎた。釈迦堂川と阿武隈川が流れる当地方は昔から度重なる水害に見舞われてきたが、昨年の台風は歴史的被害をもたらした。
 須賀川市は釈迦堂川の氾濫により館取町で男女2人が水没した各アパートから遺体で発見され、別の90代女性1人が関連死認定を受けた。
 市内21カ所の避難所には最大で436世帯1053人が身を寄せ、1060棟が住宅浸水被害を受け、今も住宅解体後の更地、住民が引っ越した後の空き家も目立つ。
 関係機関の調べで市の農業被害は約29億円、商工業被害は約53億円、鏡石町の農業被害は約13億672万円、商工業被害は約4億1540万円となり、特に須賀川市の浜尾地区や鏡石町の成田地区などは深刻な農業被害を受けた。
 あれから1年。台風による傷痕はまだまだ各所に残っているが、決壊した浜尾遊水地内の堤防再建、釈迦堂川橋から西川新橋までの堤防に土のう積み上げ、釈迦堂川・阿武隈川の河川内雑木刈り払いや河道掘削など安全安心な住民生活を守るための取り組みが続く。
 市は西川中央公園地下に雨水貯水槽を設置し、大黒町防災公園に新たな防災備蓄倉庫を建設する。
 今後も鏡石町内への遊水地建設や河川沿い堤防の強化なども計画されている。
 阿武隈時報社では台風被害を受けた被災者に、現在の状況や率直な心情などを取材した。
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 浜尾地区でこまつ果樹園を両親や主人と営む小松純子さんは「その当時のことはあまり覚えていなく、頭が真っ白の状態だった」と振り返る。
 果樹園約2㌶のうち1・6㌶のリンゴ畑は水位最高2㍍の水に浸かり、収穫量は平年の3割程度に落ち込み、自宅や加工所、乾燥機、自動車、農機具、資材、自宅も全て浸水した。
 果樹は水や泥が堆積し、根が呼吸できずに枯れる心配もあり、懸命に除去する作業を行い、4月に芽が出て多くの実を付けてくれた時には、喜びを感じたという。
 被害状況の連絡を知人らと取り合う中で、「救済りんご」とSNSで拡散され買い求める人が増え、協力農家と一緒に「ガンバりんご」と名付けて販売できた。
 全国からたくさんの支援やメールが届き、その支えに元気と勇気をもらい、ようやく今年も収穫時期を迎える。
 葉の間から真っ赤に映えるリンゴ。収穫時を待つ間も大事に管理しているという。
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 丸田町老人クラブ友愛会(七海清八会長)は役員を中心とした活発な活動で知られ、市内屈指の老人クラブとして一目置かれていた。しかし昨年の台風は活動に大きな打撃を与え、2年前は約70軒あった会員宅も10軒以上が引っ越しや施設入所などで不在となった。
 七海会長は「新型コロナがあって旅行などの行事もできない。グラウンドゴルフなども道具が流されてしまってできない。気力が奪われてしまったようだ」と肩を落とす。昨年12月には会員宅を回りマスクなど配布したが、台風復旧からの無理と新型コロナの自粛が続いたことで体調を崩す人も後を絶たないという。
 会員同士で被害の有無に差異があったため、気を遣って交流を控えているうちに疎遠になりつつあるとも。「役員を改選したいが、集まることも、後任を探すことも難しい。どうすればいいのか、行政からアドバイスがほしい」と表情を曇らせた。
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 館取町の丸高精肉店は浸水被害で休業を余儀なくされた。今年3月から「丸高精肉店プラス」として再スタートを切ったが、新型コロナが市内でも飲食店に大きな影響を及ぼし始め、出鼻をくじかれた格好となった。しかし高倉正典店長は「この状況をプラスに変えたい」と創意工夫で立ち向かう。
 台風以前はメニューから好きな肉を選ぶ一般的な焼肉屋だったが、逆境をメリットに変えるため完全予約制をとり、肉を一番美味しい状態で提供できる体制を整えた。「調理する人もいない、新型コロナにも対応しなくちゃいけないというマイナスに甘んじず、この状況だからできる最善を目指したい」と話す。コロナ禍で定着したテイクアウトサービスも継続し、市内の食文化に新たな一石を投じた。
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 鏡石町成田地区で農業を営む圓谷正幸さんは、キュウリ用ハウスなど全12棟が浸水したほか、農業機械が全滅、建てたばかりの自宅も被災した。
 一時は廃業も考えたが、周囲の協力もあり11月に自宅での生活を再開した。ハウスの解体作業も1月に完了し、国や県、町の助成金を使って4月に田植え用機械を購入、6月にハウスが完成し、7月から秋のキュウリの栽培を始め、以前のように収穫できることに安どの表情を浮かべる。
 先月全ての農機具が揃い、「ようやく一段落ついた。協力や応援してくれた人たちに恩返し出来るよう、これから頑張りたい」と意気込みを話す。
 国の遊水地計画や町の集団高台移転計画に、「成田地区は水害とは切り離せない土地、農業用機械は農家にとって生命線。高台移転が動き出すまでには時間が必要となり、その間にも水害は必ず起きる。行政には排水対策など今出来る備えを行ってほしい」と望んでいる。