【特集】伝統の「岩瀬きゅうり」を守れ ①生産量日本一からの転落

キュウリの出荷量 きゅうり去年 須賀川市・岩瀬地方が誇るブランド農産品「岩瀬きゅうり」は農業を取り巻く環境が変化する中、生産量日本一の座を奪われるなど重大な岐路に立たされている。この局面を乗り越えようと、民間と行政、農協などは連携しながら様々な試みを模索している。連載では「岩瀬きゅうり」の近年の状況や動き始めた新たな試み、キュウリと当地方の関わりなどについて紹介する。

 当地方は夏秋キュウリの生産地として全国的に知られ、特に須賀川市は昭和46年から近年まで生産量日本一に輝くなど、全国有数のキュウリ生産地である。しかし農家数、農業就業人口は減少を続け、農業従事者の高齢化が進む一方で後継者不足が深刻化している。
 JA夢みなみによると、同組合で取り扱う管内のキュウリは、平成6年に1255戸が185㌶栽培し、販売数量1万7664㌧とピークに達し、販売額は39億9000万円に上った。しかし震災前の22年には823戸が128㌶を栽培、販売数量8757㌧、販売額は23億2761万円まで下がった。
 須賀川市は農家や関係機関の努力により23年まで収穫量、出荷量とも日本一を保ち続けていた。
 そうした中で状況をさらに悪化させたのが東日本大震災・東電原発事故による風評被害だった。作付け面積は23年に、収穫量と出荷量は24年に伊達市に日本一を譲った。26、27の両年には収穫量・出荷量日本一を奪還したが、28年以降は再び2位に留まっている。
 なお伊達市でも後継者不足などの課題は共通しており、作付け面積、収穫量、出荷量のいずれも10年前と比べて減少している。
 キュウリの単価に注目すると、平成15年は1㌔あたり253円で、震災・原発事故後の24年は185円まで落ち込んだが、25年以降は280円以上を維持している。10年単位でみると価格は増加傾向にあり、生産量が減っているのに対し、需要は維持されていることが伺える。
 須賀川市は各事業を通じ担い手不足の解消を目指す。「岩瀬きゅうり設備導入資金」は新規就農者がキュウリ栽培時に必要な設備費用の10分の3以内、最大50万円を補助する。そのほか「岩瀬きゅうり担い手育成事業研修制度」、キュウリ収穫などの体験ツアー等を展開する。
 JA夢みなみでは1日当たり90㌧を処理できる大型自動選果施設「きゅうりん館」を平成8年から稼働させキュウリの出荷作業を軽減しているほか、栽培に必要な情報の提供、トップセールスなど行っている。同農協すかがわ岩瀬地区野菜協議会大東支部直販部会では30年に第三者認証JGAPを生産者19人で取得するなどの取り組みも進む。
 各種支援が充実する中でキュウリの担い手不足が続く背景に、関係者は栽培に必要となる労働力の多さや難しさ、トマトやイチゴと比較した際の出来栄えにおける魅力とやりがい不足などを挙げる。一方、市内ではキュウリのフルコースを提案する飲食店やキュウリのスマート農業を始める動きもあり、若い世代の取り組みに期待が寄せられている。