初冬の風物詩「牡丹焚火」

立ち上がる炎を静かに見つめる来場者たち

 県内外から多くの俳句愛好者らが炎を囲んだ、須賀川を代表する初冬の風物詩「牡丹焚火」は16日、須賀川牡丹園中央広場で行われた。天寿を終えた牡丹の古木に感謝を込めて火にくべ、在りし日の大輪に思いをはせるとともに、宵闇と炎が共演する情景を楽しんだ。
 牡丹焚火の催しは大正期に牡丹園管理者で俳人の柳沼翁が知人の俳人を招いたことが始まりとされ、親交があった北原白秋や原石鼎らの作品にも詠まれる。当時の時代小説を代表する吉川英治の名著「宮本武蔵」にも、決闘に臨んだ武蔵の無事な帰還を願い遊女が牡丹を火にくべる一幕が登場する。
 初冬の須賀川を代表する風物詩として市内外の俳句愛好者を中心に長年愛され受け継がれ、毎年11月第3土曜日に市と桔槹吟社が主催して開いている。
 火入れを前に橋本克也市長は春の牡丹や秋の紅葉など四季を通じた牡丹園の魅力を紹介し、「今日は牡丹焚火を存分に楽しんでいただき、名句を詠まれ俳句ポストに投句していただければと思います」とあいさつし、森川光郎桔槹吟社代表も牡丹焚火の魅力を紹介した。
 橋本市長、柳沼直三牡丹園保勝会理事長、東京から参加した遠来者らがおき火に古木をくべ、火男役の桔槹同人らが次々と牡丹樹を火に入れて2㍍近い火柱が出来上がった。
 夜空に吸い込まれるように火の粉が舞い上がる前半の火勢が落ち着くと、炎が赤や紅から徐々に青紫色へと変色し、平成13年に環境省かおり100選にも選ばれた、牡丹焚火特有のかぐわしい香りと雅な雰囲気が炉の周りを包み込んだ。
 また当日は桔槹吟社が主催して牡丹園向かいの産業会館で、俳人の片山由美子さんを迎えて「俳句は想像力」をテーマに講演会を開き、県内外から多くの俳句愛好者が出席した。
 講師の片山さんは千葉県出身。ピアノ教師を経て句作を始め、鷹羽狩行に師事した。第5回俳句研究賞を皮切りに第52回俳人協会賞などを受賞、2019年に俳誌「香雨」を創刊し主宰を務める。
 焚火の情景を詠んだ俳句大会も産業会館で開かれ、講師の片山由美子さん、森川光郎桔槹代表らが選者を務め、選者特選など各賞を選んだ。